No.2 10年居住を満たしていない方が10年特例用地をお求めになる場合
お客様から、「10年居住を満たすまでにはまだ時間が掛かるのですが、10年特例用地を購入する事は出来ますか?」と言ったご質問を受ける事があります。
ここで、上記の質問について1つ誤りを正すと、「10年特例用地」というものは特別に存在しません。
10年特例制度とは市街化調整区域に自己用住宅を建築する為の許可要件の1つに過ぎません。
よって、正しくは「自身が10年特例制度を適応出来る、もしくは、今後適応出来る予定の市街化調整区域の土地」という表現が正しいと言えるのでしょう。
「じゃあ、タイトルは何なの?」というご指摘もありましょうが、話を進めさせて頂きます。その方が分かり易いもので。
私想像するに、こんなご認識の方も少なくないのでは?
「市街化区域の土地⇒だれでも建築可能⇒だれでも購入可能」
「市街化調整区域の土地⇒要件を満たす人だけ建築可能⇒要件満たす人だけ購入可能」
大枠でありますが、市街化区域については、正解であります。
そして、市街化調整区域については、間違いであり正しくは、
「市街化調整区域⇒要件を満たす人だけ建築可能⇒だれでも購入可能」
となります。
要するに、土地を購入する事に関して基本何ら制限は無いのです。ただ1点を除いては・・・
具体的にその1点とは、その土地が「農地」である場合です。
農地とは、地目が「田」であったり「畑」であったりするものを指します。
農地を購入する際の大原則は、
筋の通った使用目的が存在する事です。
使用目的を明らかにする方法として、市街化区域の場合には「農地転用の届出」をし、市街化調整区域の場合には「農地転用の許可」を得なければなりません。(農地を農地として使用するケースはここで触れません)
農地の話はひとまず置いといて、10年特例について話を戻しましょう。
先に、市街化調整区域に自己用住宅を建築する為の許可要件の1つと申し上げました。
まず、許可を得る為のベースとして、建築申請地が属する大字(おおあざ)もしくはそこと隣接する大字に10年以上居住している事が必要です。
他にも諸条件はあるのですが、これを満たしていない事には話は進みません。
建築にあたってのステップとしては、「開発許可」を得る事から始まります。
開発許可と聞くと、何か大袈裟に感じますが、ざっくりとは建築許可だとお考えください。
この開発許可が得られると、次のステップとして「建築確認申請」に移ります。
建築確認申請は市街化区域でも行う事でありますから、開発許可が下りさえすれば、後は市街化区域の手順と差ほど違いはありません。
ところが、建築申請地が「農地」の場合、もう1つ作業が増えてくる事になります。
前出の「農地転用の許可」であります。
開発許可と同時に農地転用の許可を申請しなくてはなりません。
農地の話の中で「筋の通った使用目的」というフレーズが出ましたが、要件を満たした方が開発許可を取り自己用住宅を建築するという行為は、立派に筋が通っていると言えるでしょう。
ここでのポイントは、開発許可と農地転用の許可は
同時履行の関係にあるという点です。
鋭い方は、お気付きになったでしょうか?
冒頭のお客様からのご質問でありますが、回答はこうなります。
農地以外⇒10年居住を満たしていなくても購入可能
農地⇒10年居住を満たしている方のみ購入可能
農地以外の土地であれば、その購入に何ら制限は無いとご説明しました。
農地に関しては、「農地転用の許可」を得なくてはならず、その申請は「開発許可」と同時に行わなくてはなりません。10年居住を満たしていない方は開発許可の申請が出来ませんので、同じく農地転用の許可も申請も出来ません。よって、購入は出来ないとなるのです。
お分かり頂けましたでしょうか?
では、農地以外であれば、10年居住を満たしていなくとも市街化区域の様に普通に購入出来るのか?と言われれば、決してそうではありません。
1点あります。資金計画の面です。
現金購入であれば、何ら問題無く行けますが、住宅ローンをご利用される場合、そうではありません。
住宅ローンは住宅建築に伴う費用の借入であります。
10年居住を満たしていない方は、ただちに建築を開始する事が出来ません。
金融機関がそこをどう見るか?になってきます。
又、どこの金融機関にも言える事ですが、市街化調整区域は市街化区域と比べてどうしても担保評価を低く見られがちです。それが、10年居住者でなければ住宅が建たない様な特殊な土地である訳ですから、更に評価は低くなって仕方無いと言えましょう。
1.物件(土地)の内容
2.10年居住までの残り期間
3.借入額
4.本人の与信
等を金融機関は総合的に判断してくると思います。
無理だと申している訳では決してありませんが、一般的な土地と同類にお考えになるのは禁物かと思います。
本編での話は、「10年特例にてその上限を超過する面積をお求めになりたい場合」にも応用が利きます。
「興味はあるのだけど、ピンとこない」とされる方は、個別にご連絡ください。