No.1 使用収益開始前の土地購入について
つくば市内では現在5つの区画整理事業が施行中です。
もう終盤を迎えつつある「葛城地区」、まだまだこれからと言える「上河原崎・中西地区」と、進捗具合は様々であります。
ここで、本題に入る前に1つ用語の説明をしておきましょう。
[使用収益開始]
区画整理内の土地は造成工事やインフラ整備を経て、初めてその土地活用をする事が出来ます。
それが済むまでは、いくら地権者であろうと基本立ち入りすら出来ません。
使用収益開始とは、工事の類が全て完了し、区画整理事業主からその使用許可が下りる事を指します。
誤解して頂きたく無いのは、使用収益がまだ開始されていない土地であっても、その売買取引は普通に出来るという点です。
さてこれより、それら使用収益開始前の土地購入について考察していきたいと思います。
話を分かり易くする為に、メリット・デメリットを軸にして進めていきましょう。まず、デメリットから。
最大であり当たり前の事でもあるのですが、購入してもすぐに建物の建築が出来ません。
建築が未だ予定の域であれば、その後に続く「住む」であったり「事業をする」であったり、そもそもの目的をも無論予定のままであります。
予定と言っても、その期間によって受け止め方も変わってくるでしょう。
例えば、「あと3カ月で使用収益が開始される予定」とされている土地であれば、もう目先の事であり、後に続く建築も既に現実的なものと言えるのでしょう。
ただ、これが3年後の予定などであれば、1年遅れて4年後となる事もあるでしょうし、ある程度腰を据えて待つ覚悟が必要です。ちなみに、予定がずれて早まったという話はあまり耳にした事がありません。
故に、住み始めの時期や事業開始時期に制限がある方にはリスクが伴い、且つ、期間が長いものの方がハイリスクとなり、当然にデメリットと言えます。
次に挙げるデメリットは資金計画的な部分です。
建物分に限らず土地購入際にも借入をお考えの方には、使用収益開始時期が1つの壁になる可能性があります。
住宅ローンはマイホーム取得の為の借入であり、事業用融資は事業を運営していく為の借入です。
使用収益開始まであまりにも期間を有する土地の場合、マイホームや事業と言った本来「核」となる方の見込みが当分先になってしまいます。
そうなると、借入を希望する方の与信うんぬんの前に、金融機関はそもそものテーブルに乗せてくれない事も予想されるのです。
但し、これは期間次第でもあり、金融機関次第でもあります。一概に「何年以上はダメ」といった具体的なものをここで申し上げる事は出来ません。
物件ごとの個別相談で是非を確認していくしか方法はありません。
続いてはメリットの方に目を向けて行きます。
まず挙げられるのが、コストパフォーマンスの良さであります。
買手に対して「使用を待たせる」と言ったデメリットを負わせる訳ですから、売る側としても、多少お買い得感を持たせないと、他の競合物件と比べて見劣りしてしまいます。
ですので、一般的に使用収益が開始している物件よりも安価である事が多く、更に、使用収益開始までの期間が長ければ長い程、その傾向は顕著になります。
又、このコストパフォーマンスに目を付け、投資的要素をこれらに見出す方もいます。
仮に市場が今後も変わらないと想定するのであれば、使用収益開始前の土地は、その開始時期が近付くにつれ価値が上昇していき、開始時にピークを迎えると考える事が出来ます。
「住むつもり、もしくは事業をするつもりではあるが、場合によっては、売ってしまっても損をする事は無いだろう」と売却の選択肢も頭に入れた上で購入していく方も少なくありません。
こんな考えをお持ちの方の後押しにもなり、又メリットの1つとも言えるのでしょうが、使用収益開始前の土地は通常のものと比べ、それを所有していく上での負担が差ほど大きくありません。
まず、税金が安いです。先に価格が安いと申しましたが、税額を算出する為のその評価額は更に安いと言えます。
未だ使用出来ない土地なのですから、当然と言えば当然です。
具体的には、取得際の移転登録税や取得後の不動産取得税などがそれ程の負担になりません。
又、使用収益が開始されるまでは固定資産税も同様と言えます。
次に、地権者たる者はその土地に対して維持管理の義務を負うのが常でありますが、使用収益開始前であれば、その義務は区画整理の事業主が負う事になります。
小さな事かもしれませんが、夏場の草刈りなどに手を煩わされる事はありません。
使用収益開始前の土地購入について、私は肯定的な立場であります。
但し、時間的余裕の無い方には、あまりお勧めしません。
区画整理事業に遅延は付き物だからです。(広範囲に施行されている事業内において、スポット的に起こり得るという意味です)
それをしっかり覚悟出来る方、もしくは、それが人生設計及び事業計画の大勢に影響しない方がお求めになるべきだと考えます。
そして重要な事は、使用収益開始時期の予定あるいは見込みについては、是非自身でご確認なさってください。
不動産業者からもらった資料等を持って区画整理事業主の所に行けば、ある程度教えてくれるでしょう。
最後にもう1つアドバイスをさせてもらうと、使用収益開始前の土地は実際に現地を見る事が出来ません。開始直前のものはある程度近くまで行けたりしますが、かなり先のものについては、正直図面だけが頼りです。
図面は信頼して頂いて結構で、将来それ通りに区割がされるのですが、1つ盲点があります。
「高さ」の部分です。
大概の図面に縦横はしっかりと記載されているのですが、高さまで記載されているものは特別に取得しなければなりません。
具体的には、ポイント毎に海抜が記載されている資料があるはずです。
それを取り寄せるなりして、確認されるのが宜しいかと思います。
一般的に、道路と高低差の無い区画の方が建築費は軽減されます。
又、北道路の土地であっても、南側の区画よりも海抜が高いのであれば、陽当りが若干でも良くなります。
ゆくゆく「イメージと違った」と成らぬ様、事前にチェックされる事をお勧めします。